銘茶(太平猴魁)のふる里を訪ねて(その二)

「猴坑」は、戸数10数戸の小さい村であり、主に茶葉の生産・販売をしている村です。紹介によりますと、06年の茶葉販売で得た収入は400万元を超え、一人当たり6万元の計算になり、黄山市の最も裕福の村になっています。これは全部、「太平猴魁」のお陰です。

確か、村の周りを眺めてみましたら、全部山でして、村には平地が殆ど無く、お茶以外に栽培できる適切な農産物が思い当たりませんでした。農家は全て山の凸凹のところに立てられて、茶木もかなり急な山の斜面に植えられています。


農家裏の山に茶木が栽培されています             


農家の製茶工場(部屋)に置かれている製茶道具

私達が、「猴坑」についたら早速、農家訪問を始めました。紹介されたわけでもないため、不安を抱えながら、適当に数軒の農家に声をかけて、家に入らせていただきました。この村の全ての農家が「太平猴魁」を作っていますのでどの家にも「太平猴魁」の製作道具が揃っています。初めてこんなに身近に、「太平猴魁」特徴のひとつの、茶葉表面にプレスされた「網印」を作り出す農家現役使用中の「太平猴魁」製作道具を触れることができました。この道具は、一枚板の上に一枚の網戸をかぶり、さらに一回りサイズの大きい網戸をかぶるようなものでした。茶葉は、一枚ずつ重ならないように二枚の網戸の間に敷かれてから、手動ローラーで網戸を往復にプレスして茶葉に「網印」を加えます。せっかくのチャンスということで、熱心な農家に使い方も詳しく説明してもらいました。


「太平猴魁」の「網印」を作り出す道具


表の網戸を開けた時


二枚の網戸共に開けた場合


板だけの時


「太平猴魁」茶葉上の「網印」(かすかに見えますか?)

続いて方さんという方の家を訪ねた時に、ちょうど取り立ての茶葉を使って、「猴魁」ならず「魁尖」(同じ品種の茶木ですが、摘み取り時期や製法の違いによって作られた当地の緑茶)を作るところでした。話が弾んで、方さんが昨年に香港で開催された「国際銘茶展覧会」に出展して金賞を受賞した時に証書を見せてくれました。偶然にも方さんから「太平猴魁」を仕入れているお客さんの中に私の知人もいまして、早速、「猴坑」から電話で挨拶をして状況を説明したら、向こうをびっくりさせました。こういうこともあって、名刺などを交換して、来年に新茶サンプルを送ってもらうことにしました。


取立ての「魁尖」用生葉と受賞証書


方さんとの写真

そうこうしているうちに、2時間近くが経ち、もう下山の時間になりました。
村民達と別れてから、再び同じ車に乗り、恐ろしい帰路に立ちました。下山途中に一度対向車が来て、こっちの車がやむを得ずに数百メートルほどバックをしたこともありましたが、最終的には無事に下山することが出来ました。もう夕方になったため、すぐに船に乗り継いで自分で船を運転しながら(当然、本当の運転手がそばにいました!)村から出ました。


下山途中に振り返ってみた村(険しい山の斜面では沢山の茶木が植えられています)

この後は全て順調で、忘れられない、愉しい一日を終えました。

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