高級評茶員への道 第十三回

二日目(11月30日)の研修は、浙江華発茶業有限会社の工場見学でした。
浙江華発茶業有限会社は2002年から2007年の間ずっと茶葉の製造と輸出量が中国国内でNO.1というリーディングカンパニーだそうで、有機龍井は北京の呉裕泰に卸したり、香港に輸出していたりするそうですが、一番生産量が多いのは珠茶作りだそうです。


浙江華発茶業公司に到着

まずは達人ブレンダーによるブレンドの技術を見せていただきました。
3種類の同じ等級の茶葉を見せてくださいました。


ブレンド用の三種類の茶葉サンプル

産地や作り手、畑が違うと同じ等級の中でも味や見た目が変わってきますが、どのような味かは全て頭に入っていますというブレンダーさんを尊敬の眼差しで見つめます。参加者の皆さんも「こんなに滑らかな揺板は見たことがない」と嘆息していました。
大きめの天秤に分銅を載せ、3種類の茶葉の割合を決めてブレンドしたら、サンプルと出来上がった茶葉のグラム数を同じにして見比べ、「僕が作った茶葉の方が良いよね、サンプルの方が砕けた茶葉、多いでしょ」と棚から砕けた茶葉だけが入ったお茶の缶を出して来て秤に乗せ、加えたらサンプルと見た目がほぼ同じものが出来上がりました。


ブレンダーのブレンド技術を見学中

ブレンドは短い時は5分、長い時は2時間もかかるとのことでした。「風邪を引いたら仕事にならないから休むけれど、煙草は吸うし辛いものも食べるよ」と言っていたので、龔先生が「いけないのよ、煙草」と言ったら「(煙草を吸っている)俺の方が(煙草を吸わない)先生よりも上ってことかな」と軽口を叩いていらっしゃいました。ブレンダー歴20年余りの自信が言わせているのでしょうか。
あっ!目に星を浮かべている人発見!!ダメですよSさん、劉さん(※岩茶づくりの名人)から浮気ですかー(笑)。
「職人って素敵よねー」ですって。野球の選手とかでも、マウンドに立つとカッコイイ人っていますよね。帰りのバスでお話しをしたら、Sさんは職人気質の方に弱く、Yさんは音楽が出来るとカッコ良く見えてくるらしいです。私はダンスのリードが上手いとカッコ良く見えてくるのですが、スーツを着ていたり、眼鏡をしているとカッコイイ人もいますよね。

次は毛茶の精製の達人のもとへ。この道30年以上という達人、毛茶を見ただけで、どの等級の茶葉がどのくらい出来るのか、どのくらいロスが出来るのかが一目でわかり、それがわからない凡人が篩にかけてわけた後、この等級の茶葉は何元であの等級のは何元、と計算したとしても誤差は多くても5分(0.05元≒0.15円)だそうです。
眉茶や珠茶は売値が高いものではないので原料となる毛茶をあまり高くは買えないし、かといってあまり安くては農家の人が売ってくれないけれども、買うとしたらトン単位だから塵が積もって山となるので、誤差が大きいと大変だと仰っていました。
達人が毛茶を竹ざるの上で揺板すると、上に軽い茎や梗が出てきました。これは使えないもの。


茶葉等級わけデモを見学中

真ん中あたりの茶葉を4目(1平方インチあたりの目の数)の篩にかけたり6目の篩にかけて、1級から5級の眉茶の原料をあっという間に作り出しました。特筆すべきなのは、3級から5級にかけては、目の数は同じ篩で、篩をふる強さだけで、等級をわけていたことです。実技テストで眉茶が当たった時は、重さを測ろう、絶対に、と思いました。


龔先生も自ら説明

工場内、しんしんと冷えてきたなぁ…バスの運ちゃんが飲んでいる龍井、美味しそう…と思い、「買えるの?」と聞いたら有機龍井の極品が250gで120元。缶がなければ105元。そっかー。試飲させて。ぐびぐび。美味しい。包装の箱はいらないって言ったら安くなる?ならない?そっかー。1缶で売ってくれる?だめ?そっかー。今の時期に龍井かー。こんなにいらないけれど、買いたいという人もいるだろうし、とお買い上げしました。
その後、浙江華発茶業公司董事長のインさんという方のお話しを伺いました。


浙江華発茶業公司董事長インさんが会社紹介

ISO9000、ISO14001、HACCP、QS 、IMO有機産品などの国際・国内の認証に合格していること、一年に加工輸出している绿茶が2.6万トン、売り上げは3.61億元で加工している茶葉の量から言えば利益がとても少ないのだけれど、安いお茶を作らないと農家が困るので、誰かがやらなければいけない、国営企業ではなくても国のために必要であること、子会社は昨日お邪魔した『帝国茶』を含めて6つ、契約茶畑の面積は16.2万亩で契約農家は8万户、工場面積は中国の中でも最大規模で、加工能力、契約茶畑や農家の数では国内No.1のリーディングカンパニーだとおっしゃっていました。珠茶の主な輸出国であるモロッコでは王室御用達なんだよ、モロッコでうちの企業の名前を知らない人はいないんだよ、日本に売り込めたらいいのにな、とも仰っていました。ミントとお砂糖をどっさり入れて煮込んで作るミントティー、まだ飲んだことはないのですが、来年の夏あたりに試してみようかな、と思いました。また、これからお見せする機械は、規模では日本と比べ物になっても(※中国国内最大級の規模、日本と比べ物にならないくらいの大きさです)、衛生面や機械の精密度では日本とは比べ物にならないのだろう、と謙遜交じりに言いつつ「聞いた話によれば、静岡では工場の機械の半分は国が、4分の1は県が負担してくれるそうで、企業の負担は4分の1だそうです。それが事実だとしたら、ちょっと中国政府に働きかけてなんとかもうちょっとならないかなぁ、と思っています」と冗談めかしておっしゃっていました。
その事実と日本への売り込みのナイスアイディア、熱烈募集中らしいので、どなたか日本の茶業にお詳しい方、アイディアマンがいらっしゃいましたら、是非浙江華発茶業有限会社のインさんまでよろしくお願いいたします。
工場見学の前に昼食でした。席が浙江大学で龔先生の優秀な教え子だったという従業員の方の隣になりました。


工場食堂でのお昼

えーとえーと。中国語が不得意なりに異文化コミュニケーションをはかってみようかな。使っている野菜が有機だとか、鳥もここで飼育したものだと聞いたので「へんはおちー」→ご馳走をお皿に山盛り。なぜか一人で上海蟹を2つ、パンを3つも食べてしまいました。ずっとバスに乗ってとくに運動していないのに危険です、明らかにカロリーが高いです…ここはお茶を飲んで消化せねば、ぐびぐび。あ、美味しい。「へんはおふー。くーいーまいまー?」→お隣に座った従業員さんがインさんに相談後、参加者全員に茶葉プレゼント決定。異文化コミュニケーションって言うより、体で自己紹介(※我是くいしんぼう)をしたって感じですが、とりあえず感謝の気持ちを伝えなければ!「しぇいしぇい、らおばん」発音がいけなかったのか、老板というのが相応しくない言葉だったのかは不明ですが、先生を含めて中国国籍の皆様に笑われました、しくしく。お隣に座った方にお手数をおかけしました、という意味のつもりで「まーふぁんにー」と言ったら3回くらい「ああ?」と聞き返されましたし、この講座が終わったら中国語を勉強しようかな。インさんに「ヨーロッパの人っぽい顔しているね」と言われました。バタ臭い顔ですが純粋な日本人です、ついでに純情ですって中国語でなんと言えば良いのでしょうか。
ちなみに頂いた鉄観音は、お店で一番売れている物だそうです。焙煎の加減が軽すぎず、本当に好みな味だったこともあり、プレゼントしていただいた以外にも300g購入させていただきました。
インさんも浙江大学をご卒業なさった方だったから龔先生の引率で来た私達にとても親切にしてくださったのか、本当に良い方だったからなのか、にこやかに厚くもてなして下さいました。最初は日曜だから工場の機械は動いていない、というお話でしたが、インさんのご好意で工場内の機械の一部を動かしてくださいましたし。
ただ工場の機械を見学するだけでなく、実際に動かしていただいたお陰で、縦ゆれや風で飛ばすという工程をとても良く理解できました。


工場内出荷待ちのマリへの輸出茶

おお!茶葉がクルクル回っています。コレが「車色」かー。おお!縦ゆれで茶葉がジャンピングしている!コレが噂の「トウ(手偏に斗)篩」かー。工場内は写真撮影が禁止されていたのですが、工場を見学出来るチャンスなんて本当に貴重ですから、必死に目に焼き付けました。倉庫や車につまれた麻袋の量はインさんの「農家のためにも、作り続ける必要がある」という言葉に圧倒的な説得力を与えてくれました。
最後に全員で集合写真を撮り、個別にインさんと写真を撮りたかったなと思いつつ、握手をしていただきました。またおいで、と優しく笑ってくださいました。


董事長インさんからのお土産


董事長に別れを告げて帰途に

帰りのバスの中で楽しかったなぁ、でも、次が総合復習でその次の週がテストかー、テストはイヤだなぁ、と思っていたら大江先生が「あっ。チマキが美味しいパーキングエリアは通らないみたいです。皆、来週のテストの時に買おうね、さようならチマキ」とおっしゃいました。バスの中の皆で爆笑しつつ、テストがイヤだという気持ちがちょっと軽くなりましたが(※チマキ目当てで)、皆で集まってわいわい勉強したり、息抜きしたり息抜きの時間の方が勉強時間より多くて慌てたり、という苦しいながらも楽しい時間を過ごせるのも残りわずかなのだな、と少し寂しくなりました。

寄稿byとおこ

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