高級評茶員への道:第五回目

午前中は大江先生ご担当で、お茶の科学と合理的な飲み方の理論の勉強でした。
オール日本語って素晴らしいなぁ。季節によって合うお茶があるのだそうです。春はジャスミン茶。夏は緑茶。秋は烏龍茶で冬は紅茶。科学的な話だけではなく、中医学的な見地から話をされ、納得したり疑問に思ったり。
四季や老若男女という、非常にイメージがわきやすいテーマだったので、すんなりと頭に入ってきました。ティーポリフェノールはビタミン類を体にキープする力がある、目の水晶体が濁ることで起きる白内障はビタミンの欠如から起きるのでそれを防ぐことが出来るとか、老化や癌の原因と言われるフリーラジカルと結びつきやすいので健康に良いとか。
杭州にある浙江大学茶学系がテキストを書いているので緑茶を強烈にプッシュしているのでは…福建省の人が書いたらきっと烏龍茶が、雲南の人が書いたらきっと黒茶がいかに優れているかという話になるのでは、とちょっと疑問に思ったりもしましたが、単にお茶は体に良いのだという話ばかりではなく、体質や体調的にお茶を飲まない方が良い場合についても話は及びました。
お茶はフリーラジカルばかりでなく、金属とも結びつきやすいので鉄分の吸収だけではなく、カルシウムの吸収なども妨げるそうです。
テアニンの収れん作用や、カフェインによる興奮効果が及ぼす悪影響についても学びました。
午後は、八因子で眉茶と諸ウ紅を対様審評。見本と比べて外形と内質がどうか見比べて、合否を判定するのです。
これは、言葉を書かないでよい分、結構楽でした…その後にやった広東烏龍の対対子(神経衰弱)と比べれば。老樹と蜜香、桃花、桂花の4つ、各々を飲めば違いはわかります。
ですが、神経衰弱にすると、まず手際が悪いので、お茶が冷めてしまい、お茶が冷めると、香りがわからなくなります。
残るのは、しぶーい広東烏龍たち。2つあっていて…2つ間違えていました。
50%かー。偶々運がよく、上手くいったのか、偶々運が悪く、失敗したのか。これは家で地味に地道に練習をするしかないでしょう(涙)。
そういうわけで、審評用のマグカップセットを2つ買い足し、広東烏龍も4種類買いました。
同じ班の人たちと「き…金曜日にまたやろうね。11時に心也清で僕と握手☆」と言って家に帰りました。お隣の班は9時半集合らしいです。
テストまで一ヶ月強。そろそろ心也清に日参する日々が始まります。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道:第四回目

先週に引き続き、湯先生の担当でした。午前中は眉茶の加工方法とお茶のブレンドについて習いました。


湯先生が講義中。

眉茶は、原材料が荒めなので、精制する必要があるのだそうです。
特に輸出をする場合、サイズをそろえたり、同じ形にして品質を均一にしないといけないのだそうです。
「精制」はヒト手間を加える、良いことのように思えたので、どうして名優茶でやらないのだろうと一瞬考えたのですが、龍井や碧螺春はそのままでも十分に綺麗であり、また、精制の時間を取ることで新鮮であることがとりえの新茶の経済価値が下がったり芽の柔らかいお茶は砕けやすいと聞き、なるほどと思いました。
ちなみに日本茶は農協を経由する段階で全て精制するのだそうです。
精制の目的は大きくわけて3つ。外形を美しくすること・等級わけをすること・ごみや茎、、髪の毛など茶葉以外のものを取り除くことの3つだそうです。
人間のお化粧と同じで、見た目を美しくするけれど、味の変化はそう大きくはないそうですが、程度によっては湯色が悪くなるそうです。
また、後でブレンドすることを絵を描くことに例え、いろいろな絵の具を混ぜることで絵が描けるけれど、ゴチャゴチャの色が混ざった絵の具1種類で絵を描けないのと一緒だといわれ、確かにそうだなと思いました。
等級わけの方法を詳しく教えていただいた後、ブレンドについて勉強しました。面白いと思ったのは、1+1=2ではダメだということです。
悪い材料から良い味を作ることがブレンダーの腕の見せ所だそうで、良い材料を使って美味しくするのは誰にでも出来ますが、冴えない材料で美味しく出来たら大儲け出来る、そうです。
1+1が2よりも大きかったら、良いブレンダー。
1+1が2よりも小さかったら、ダメなブレンダー。
なるほどー。湯先生の授業はたとえ話もわかりやすかったなぁと思っていたら、最後に大江先生が「今日の内容はテストに出ません(キッパリ)」とおっしゃり、微妙な気持ちになりながらお昼休憩に突入。
午後は名優緑茶を専門用語で審評です。某グルメ漫画(美味○んぼ)のガンコ親父ばりに評茶の専門用語を使いこなそう、と「むむむ!これは…若い香りがする…だが残念なことに、ちょっと焦げ臭い…」「おぉ!この香りはどうだ…茶葉の特性が出 ているじゃないか…」とか「この爽やかでサッパリとした味…」「ツヤのある湯色…」「均一が高く若い葉だ…茶殻も美しい…」とか、8種類の緑茶でやってみました。
高級って本当に大変だなぁ、と自信を喪失してその日は帰途についたのですが、土曜日に、Yさんから電話がかかってきました。
お茶市場で8種類の緑茶を買って来たのでもし良ければ今から心也清で復習をしようというお誘いでした。
小周に「テストに出ないよー」と言われつつ、Yさんが買って来た茶葉と見比べました。
市場で購入できる茶葉には限界があり、先生が持ってきた極上のサンプルと比べると劣っていたり、その茶葉自体が売っていなかったりと大変だったとのことですが、評茶は、そのお茶の特徴を知っているという大前提の下で、その茶葉が標準的な茶葉と比べてどうかということを書かなくてはいけません。
その茶葉の特徴を水曜日の段階よりはかなりはっきりとつかめたという手応えがあり、Yさんには大感謝です。例えテストに出なくても、引き出しは多いに越したことはありません。
己に勝る良き友が多くいる、この環境で勉強することが出来るのは本当に有難いことだなぁとしみじみ思います。藍より青くなれることはなさそうですが、朱に交わって、ちょっとは赤くなれているでしょうか。高級はハイレベルだと実感する日々ですが、自分自身もレベルアップできるよう、頑張ります。



講義中のお茶飲み比べ風景。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道:第三回目

第三回目は、地理環境が茶葉に与える影響についてを湯先生という加工と評茶専門の先生が話してくださいました。
光の波長の長短が重要だなんて思いつきもしませんでした。
植物がよく成長するのは、波長が長い光(赤や橙色)で、波長が短い光(青や紫)だと成長が遅いらしいです。
私は素人なので、生産量が高い方が良いのかと思ったら、光合成が早くなっても、根で作り、運ばれるアミノ酸の量が増えるわけではないので、アミノ酸の量は相対的に減ってしまうので美味しいお茶は出来ないのだそうです。高山では霧が発生し、光の波長は短くなります。だから高山茶は美味しいのか、と納得しました。勿論光だけが重要なわけではなく、土壌や温度の話も詳しくして下さいました。こういったお話に興味は尽きません。

午後の実技では産地が違う龍井と碧螺春と作り方が似ているお茶の飲み比べをしました。
龍井の中に「100%獅峰」のお茶がありました。
一生に一度飲めるかどうかという、シロモノです。ニセモノやブレンドされたものだったら良く見かけますが、浙江大学の茶学系の先生がニセモノを掴まされるはずないし。
こういうお茶を評茶式で飲むのはいかがなものかと思いつつ、3g4分で飲みました。他に飲み比べたのは「西湖龍井」とか「大仏龍井」など。
3Aの西湖龍井は「美味しい龍井だね」という感じだったのですが「100%獅峰」は。「うぉー」「うひゃー」「ひょぇー」という、今まで飲んできた龍井を覆す美味しさでした。評茶はそういった感性ではなく、「評茶する機械に徹する」ことが求められます。騒いですみません。評茶する機械ですね…ぐびぐび。
評茶をすると茶葉を見るだけではわからなかった作り方のほんのちょっとの失敗がよく見えてきます。火が強すぎたら焦げ臭くなったり、熱がこもったら湯色が黄色っぽくなったり。評茶は「より良いお茶作りが出来るよう指導するため、アラや欠点を見つける」ことが求められます。高級評茶員はだてに「高級」ではないな、難しいなと改めて感じました。
評茶の後、中級茶芸師で一緒に勉強したIさんが焼いてくれたクッキーを「俺の彼女が焼いてくれたんだー☆」と自慢しながら皆と食べました。
疲れた神経と胃袋に染み渡る優しさにホロリとしながら、教室を後にしました。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道:第二回目

第二回目の授業では、福井先生が緑茶と烏龍茶の春茶・秋茶の品質と特徴について話してくださいました。
お茶に春茶とか秋茶があるということをご存知ない方も、「香りマツタケ味シメジ」という言葉はご存知だと思います。
マツタケは香りが良いけれど、味はシメジの方が美味しいよということわざですが、中国茶にも似たようなことわざがあります。「味は春茶が美味しいけれど、香りは秋茶の方が良い(春水秋香)」。

冬の間、たっぷりと栄養を蓄えたお茶の木が芽吹いたら、とっても美味しいお茶の葉になりそうな気がしませんか?
また、冬に向けて、栄養を蓄えようとする秋のお茶の葉も美味しくなります。

午後の実技では、午前中に習ったことを踏まえて、本山(安渓烏龍茶)の「春茶」と「秋茶」と謎の安渓鉄観音Ⅹの3種を淹れ、謎のⅩが春茶か秋茶かをあてました。

同じお茶を2つの杯子に淹れ、計6つの杯子でペアリングです。

杯子の裏に正解を書き、5人でせーのでペアだと思ったお茶を指差しました。

この「5人で『いっせーの☆せ』で指を差して、ペアを当てる」というルール、結構地味に、かなり精神的にプレッシャーがかかるルールです。
外れたら恥ずかしいじゃないですか。でも、付和雷同していると本番では一人だから実力がつかないし。そもそもいっせーの、で毎回後だししていたら胡散臭いにも程があります。そんなわけで潔く堂々と間違えておきました(涙)。

香りだけでペアリングの後、飲んでみてペアリング。
3煎、それを繰り返しました(抽出時間は2分・3分・5分)。
味覚が鋭敏な人であれば、マツタケとシメジの食べ比べくらいわかりやすいのでしょうか。
私はまだそこまでの域に達していないので結構辛かったです。
答えは限りなく夏茶に近い秋茶とのこと。当たっていました。良かった良かった。

授業のあと、前回の授業を休んだ友人とお茶しつつ前回の授業について復習。 避風塘は机の上がべとべとだったので、教科書やノートを置きたくないので口頭で話した後、教科書兼ノート(※余白の部分に直接書き込んでいます)を貸しました。

寄稿byとおこ