重陽の茶会

今日は和のサロン最終日。
長月ということで、重陽の節句をテーマとしたお茶会でした。
九月九日は五節句のひとつで重陽の節句、別名菊の節句とも呼ばれる中国由来の行事だそうです。
諸先生方は着物をビシッと着こなし、私は浴衣を着ました。
日本にいた頃、友達に着付けを習ったので浴衣ならなんとか着られます…なんとか…え?左前ですか?ウッカリ幽霊になりかけ、結局先生のお手を煩わせてしまいました。

茶室に入る前につくばいで手と口を清めた後、床の間にある「和敬静寂」という掛け軸と可憐な白い菊を拝見し、御釜を拝見した後、練りきりをいただきました。梅羊羹に金箔を散らした、目に美しく美味しいお菓子でした。
お茶の良い香りが立ち込め、正客さまから順にお茶を飲み回しました。
とろりと練り上げられた濃茶は、見た目が苦そうだったのですが、苦くも渋くもなく、本当に美味しく上品な味がしました。
一度退席をした後は、薄茶のお手前です。
床の間の掛け軸は神成先生お作のタペストリー、花は紫色の菊に変わっており、「亭主の心配り」をしみじみと感じました。
表千家のN先生がたてたお茶をいただきました。
全5回の「和のサロン」では主に裏千家を習って来ましたが、折に触れ、他の千家でのやり方との違いを教わる機会に恵まれました。
お菓子をいただくタイミングの違いは、今回次客として招かれたOさんが体を張って教えてくださいました(笑)。
千島湖で私が次客をつとめた時のお正客さまでもあったOさん(※そのときの様子はこちら)は、本帰国が決まったそうで、仲良くしていただいていただけに本当に本当にホンッッットウにに寂しいのですが、お陰で「一期一会」の精神というものが、ホンの少しだけ理解できた気がしました。

まだまだ初心者ゆえ、間違えたらどうしよう、作法はどうだったろう、足がしびれてきたなぁ、などという様々な雑念が頭をよぎり、心の底からお茶会の雰囲気やお茶・お菓子の味に浸れないのですが、シャンと背筋を伸ばした美しい佇まいの諸先生方に触発され、中国で生きていく為に逞しくなりすぎた自分(え?もともと?)を自省しました。
茶の湯は「おもてなしの心」。
諸先生方の細やかな心配りや気働きの素晴らしさゆえ、楽しむことが出来たのだと思います。和やかで楽しい時間を本当にありがとうございました。

寄稿byとおこ

高級評茶員への道(初日)

9月10日(水)、いよいよ高級評茶員の講座が始まりました。

初日の今日は中級評茶員に引き続き、浙江大学茶学系龔淑英教授にお世話になりました。
午前中の講義は「中国茶葉標準紹介」。中級でも習った、ぐおじゃーびゃおじゅん(国家標準・略してGB)とかそういうのでしょ?と思ったら、さらっと流した中級とは違い、とても深く詳しく教えてくださいました。

系統誤差(やり方の違いで結果に誤差が出てしまうこと)のないように、お茶の分析方法やサンプルのとり方、繊維質の測定方法のやり方を全て標準にしているのだそうです。
ちなみに繊維質の標準的測定方法は「550度で30分燃やしたカスの量」だそうです。
「これが、『原産地域産品 龍井茶』標準です。読み方を説明します」
「龍井茶の定義『在原産地域範囲内采摘的茶樹鮮葉(中略)具有”色緑、香郁、味醇、形美”的扁形緑茶』これ、中国人だったら丸暗記していただくところです」
「ここは教科書(※中国語)35ページと40ページに詳しく書いてあるんで、家で読んでください」
流石、高級です。求められるレベルが違います。

午後は、龍井の等級当てでした。
対様標準(見比べる用の等級ごとのサンプル)は07年度のもの=06年度に摘まれたものなので古く、色が落ちているので味ではなく、外見の若さとか茶殻などで判断してね、等級を当てるのは08年物の茶葉だから、と初日からかなりハイレベルな要求をされ、四苦八苦。

龔淑英教授が「貢牌」というブランドでお買いになったという茶葉4種類、うち特級と1級の間だろう、さっき龔淑英教授が1斤(500g)2200元って言っていた、良さげな茶葉を「評茶式」で淹れました。渋い…。
ぬるめのお湯で美味しくいただきたいけれど、評茶は100度のお湯できっちり4分淹れるのが決まりです。

美味しくいただきたいなぁ、等級当てなんかしないで、オヤツとか食べながら楽しく和気藹々と(現実逃避に妄想してみます)。

この等級あては5人の班毎にわけられて行われたのですが、「班の意見じゃなくて、自分たち一人一人の意見をどうぞ」と言われていました。でも初日だし、やっぱり他人の意見は気になります。
「これは0.3級(限りなく特級に近い1級)かなー」と意見が一致することもあれば「これは2級と3級の間だ・否これは1級と2級の間だ」と意見が別れることもありました。悩みぬいた結果を清書して渡した人から順次解散という形で、初日の講座は幕を閉じました。

本講座は、開講されるのを本当に楽しみに待っていたので終わった後は疲れもありましたが充実感でいっぱいでした。
この初心を、全14回キープし続けることが出来れば、合格間違いナシなんですが。
来週も頑張ります…あ!!その前に35ページと40ページを読まないと(笑)。

長月のお茶会

9月5日のサロンは、重陽節(菊の節句)と中秋節を祝って、長月のお茶会のテーブルコーディネートでした。

秋の気配を感じながら、夏の疲れを癒してくれる様な、落ち着いていて、まったりできる、素敵なコーディネートでした。
モンステラの葉がアクセントになり、メインに、五つ星ホテルの月餅が飾られ、とても豪華でもありました。





上海に住んでいても、月餅は中々食べる機会が無いのですが、今日は五つ星ホテルの月餅の食べ比べという事で、心躍ります!
月餅は、リッツカールトン(ポートマン)、フォーシーズンズホテル、シャングリラホテルのものです。重々しい箱に入った月餅は、良いお値段だそうですが、すぐに売れてしまうという事でした。

小豆、蓮の実、ココナッツ味などの月餅を頂きました。
月餅の中には、満月をイメージした卵の黄身が入っているのですが、塩味もそれほどきつくなく、おいしく頂きました。

月餅に合わせて、中国茶は、「杭白菊茶」、「東方美人」、「正山小種・特級」 「武夷岩茶・鉄羅漢」を頂きました。

9月9日(旧暦)は重陽節で、中国では、ぐみの実を袋に入れて丘や山に登ったり、 菊の花の香りを移した酒を飲み、邪気を払い、長寿を願うという習慣があったそうです。
杭州では、金木犀の花が香る木の下で、菊茶を飲むそうです。何とも風情がありますね。
この杭白菊茶は、解熱作用や眼に良いと言われ、湯に浮かんだ菊の花を観ながら、頂けば、美味しさも一入です。


月餅の食べ比べは、初めての経験で、とても楽しかったです。
おいしい月餅と中国茶を愉しみながら、素敵な空間にいると、時間も忘れてしまいます。
先人達の月への想いを少しだけ、感じることができた気がする一日でした。。


※中秋節(旧暦の8月15日、今年は9月14日)は、唐の時代頃から、収穫の喜びを神様に感謝する意味を込めて、美しい月を拝む習慣が始まり、今は、家族と一緒に月餅を食べながら家族円満を楽しむ行事となっているそうです。
家庭の年長者が月餅を家族分に切り分け、1人1切れづつ食べるので、1つの月餅が大きく、中身もぎっしりと作られているそうです。
月餅は大きく分けると、広東式と蘇州式の2種類で、蘇州式はパイ生地で作られています。

※重陽節(菊の節句)の9月9日は、陰陽思想では、奇数は縁起の良い陽の数とされ、 一番大きな陽の数である九が重なるこの日を、重陽として節句の一つとしたそうです。
日本では、中国から伝わり、平安時代には、”重陽の節会”として宮中行事となり、 江戸時代には武家の祝日でした。明治時代には、庶民の間でも様々な行事が行われていました。

東華大学で中国茶体験講座

8月22日(金)、東華大学国際文化交流学院にて心也清茶社の大江先生とスタッフ達による中国茶体験講座が行われました。
この講座の参加者は韓国のある美容専門学校の生徒達で、普段の心也清の少人数制サロンとは雰囲気も国籍も全く異なり、生徒数43名、引率の教師5名に通訳2名という大人数を前に、大江先生が中国語でレッスンをなさり、それを通訳の方が訳して行くというスタイルでした。


大江先生が東華大学の大講義室での講義風景。

中国茶の紹介(6種類+再加工茶)の一環として茶葉のサンプルを教室でまわしたところ、茶葉をかじって「ニガいっ」と笑う子たちがいて、 17~18才くらいのと箸が転げてもおかしかった頃を思い出して遠い目になりました。


茶葉をかじってあじみしている生徒達。

さて、ウェルカムティーとして、広東烏龍のアイス(桂花香)を出したところ、丁度美味しく入っていたのに「香りは良いけれど渋い・苦い」と以外にも不評。

ふっ。やっぱり成熟した大人じゃないと、色んなものの良さがわからないのね(※髪、かきあげてます)。
やっぱりアレね、若いだけじゃダメなのよっ(※ハナイキ、荒めです)。


先生が淹れた中国茶を試飲している生徒達。

先日、一時帰国した日本の美容院で「コムスメに負けない!!」というキャッチフレーズの艶女(と書いてアデージョと読むらしいです)向けの雑誌を置かれた私が「コムスメに負けない」めいたことを思っている頃、大江先生は「若い&普段中国茶を飲みなれていない=薄めのお茶が好き」と判断していました。

その後淹れ たお茶は全て薄めにしたので、大好評でした。
そう言えば「このお茶は○gで水が□ccだから△分」といったことだけでなく年齢や地方に寄って味覚が変わるというお話も授業で習ったなぁ。海よりも深く反省です。

次に小孫と小周が茶芸を披露しました。
小孫の西湖龍井の茶芸後は試飲体験(「香ばしくて美味しい」と大好評)、小周の烏龍茶の茶芸披露後は茶芸体験(実際にやってみるので皆、興味津々)。
参加型授業になり、サマースクールの最終日ということもあって眠そうだった子たちの目も俄然輝いてきました。


小周が茶芸を披露しているところ。

その後はプーアル茶の茶芸&試飲体験。
たまたま皆の口にあったのかな、最後の質疑応答の時間で一番多く聞かれたのもプーアル茶についてだったし…とその時は思ったのですが、後から大江先生が「韓国人はプーアル茶が好きって聞いていたから最後にプーアル茶を出したの」と仰っていてその深謀遠慮に驚きました。

わずか2時間という限られた時間の中で、最初はあまり興味がなさそうだった子たちまで中国茶に興味を持つようになったのは、「体験させる」「最初のお茶で次に淹れるお茶の濃度を調節する」「相手好みのお茶をリサーチして出す」といった生徒一人ひとりが楽しく過ごせるようにという大江先生の気配りや真心が伝わったからだと思います。

通訳の人がさっさと帰ってしまった後も各々記念写真を撮ったり、黒板にメッセージを書いてくれたり、「本当に楽しかった」「名残惜しい」といったことが伝わって来て、黒板に残されていたハングル文字がわからない歯がゆさもありましたが、言葉が通じなくても伝わってくる『想い』に胸が熱くなりました。



さて、このハングル文字の意味はなんでしょうか。

なんと言っても使用言語が中国語と韓国語だったので、授業の内容は殆ど理解できなかったのですが、中国茶の知識がスゴイというだけでなく、人格的にも素晴らしい師に就いて学んでいるということを実感することが出来ました。普段の授業が日本語であるというありがたみもものすごく実感しましたが。
夏休み期間が終わり、授業が始まるのが楽しみでなりません。

寄稿by東塚