中級茶芸師への道・3日目

6月27日(金曜日)
今日の午前中は花茶の淹れ方の講義です。
花茶に使われる緑茶は質が良くないので茶の湯や茶葉は美しくないけれど、香りがとても良いので蓋碗で楽しみます。工夫茶の場合はガラスの蓋碗を使ってください。普通緑茶は蓋をしないで淹れますが、花茶は香りを楽しむので蓋をします。


蓋碗で花茶の淹れ方を講義中の周先生

昨日と同じく、美しい所作でお茶を淹れながら説明をしてくださるのを必死でメモします。
蓋碗でお茶を飲む時、男性と女性ではやり方が違うのよ、女性は手の皮が薄いから左手のソーサーから蓋碗を外さないの。
私の手の皮は薄いです。ツラノカワは更に薄いです。メモメモ。
その後、実践。今日も居残り決定だな、という散々な出来で自己嫌悪。美しく見せるって難しいなぁ。ううぅ。


グループ分けの茶芸実践


蓋碗の扱い方を指導中の周先生

午後からは徐南眉先生という癒し系のおばあちゃん講師がいらっしゃいました。中国茶文化の、主に人文科学について講義をしてくださいました。
唐の時代は「煮茶法」だった…というのは有名ですが、水1リットルに8gの茶葉で5人分、水がふつふつしてきたら塩を加えて…とまるで「今日の料理」とか「3分クッキング」のようにレシピを紹介していただいたのは初めてです。また、少数民族のお茶の中には今でも三国以前の時代のようにお茶を漬物サラダのように食べるものがあるそうです。美味しいのかな。
他にも唐の時代には数百年続いた儒教・道教・仏教の宗教戦争がお茶を通じて仲良くなり、三教合流したというお話などなど、時代時代にあった出来事をとても熱心に話してくださいました。
いいねー、こういう話し大好き、古い歴史上の人物が血の通った人間なんだって思えてきて、今は存在しない茶葉の味はひょっとしたらあんな味なんじゃ、こんな味なんじゃってわくわくが止まらないよ。まぁ、3日間ずっと硬い椅子に座りっぱなしで肩こりも止まらないけど。ということで授業後、近くの按摩に行ってみました。
その後教室に戻り、20時まで花茶の淹れ方を研究し、2g=16粒~18粒であることに気づきました。
更に3回に2回は目分量で17粒になるという成果をあげることが出来ました。明日も頑張るぞー。

中級茶芸師への道・2日目

6月26日(木)
今日の講師は周智修副研究員という、知的な女性の方でした。
中国茶葉学会の常務副秘書長にして茶葉研究所の職業訓練センターの主任です。バリキャリってヤツでしょうか。かっちょいいです。


周先生が講義中

本日のスケジュールは午前中:中国茶の淹れ方と茶器の説明、午後:緑茶の淹れ方の講義と練習でした。
午前中は科学的な見地から美味しいお茶を淹れ、芸術的な視点から美を追求して茶芸師は結果だけではなく経過の美しさが重要だというお話と、茶器を陶器・磁器・ガラスといった材質のわけてメリットデメリットの説明、茶器ごとの使用方法と良い器の選び方などの話を伺いました。
紫砂壷は茶漉しの部分が蜂の巣形であると手入れの際に手間がかかり使い勝手が良くないと心也清で教えていただいていたのですが、お茶を淹れる際には茶葉が詰まりにくく、淹れやすいので良いということでした。
なかなかうまく行かないものです。「兎角に人の世は住みにくい。」ってことでしょうか。これは漱石の『草枕』という本の有名な書き出しの一節で、「住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。」と続きます。住みにくい=上海暮らし、詩・画=芸術 ≒茶芸と我が身に置き換え、美しくって更に美味しいなんて最高だわぁ、と理論をかなり飛躍させて自分を鼓舞しつつ、午後はいよいよ茶芸の実技です。

緑茶かー、結構レッスンに通ったし清明節前にいっぱい買ったのを沢山飲んでいるし余裕かなぁと内心ちょっと思っていたのですが、思いあがりも良いところでした。
立ち姿や座っている姿勢は優美に。コップをひっくり返す、何かを取るという仕草も美しく円を描くように、そして動きは流れるように連綿と。素敵な笑顔とアイコンタクトも忘れずに。
講師の先生がお手本として解説つきでゆっくりと、次に通しで茶芸を見せてくださった後、班ごとに分かれて自主練です。
お互いに厳しく注意していこうというポリシーで切磋琢磨です。


茶芸の自主練習


周先生が茶芸練習を指導

同じ班の皆様のお陰で、「机の下の脚からして違いますから(×ズボンなのを良いことに開いてる○そろえた後、片足をちょっと後ろに)」という状況から比べれば格段に進歩出来たのではないかと思います。
ふと気づいたらうちの班の人以外誰もいない!私たち、かなり頑張ったかもっ!!
家に帰っても頑張りは続き、連綿とした動きを心がけて夕食時にやたらと手首をクルンとまわし、夫にかなり不審がられました。どんなに不審がられても、曲がるときは勿論直角です。
頑張りの方向性がちょっと違う気もしますが、気にせず明日も頑張ろうと思います。

中級茶芸師への道・初日

6月25日(水)
中級茶芸師の資格を取得する短期集中講座が始まりました。
6日間にわたり、9時から17時まで中国茶の理論と技芸を学びます。

初日の今日は開校式、理論の講座と審評する茶葉20種類の発表がありました。

理論の講座担当講師は兪永明先生という優しそうな年配の方でした。
中国農業科学院茶葉研究所研究員で、モト副所長だそうです。
きっとスゴイ方なんだろうな、最終日にはツーショットで写真を撮っていただこう、サインも忘れずにいただかなくてはっ。


兪永明先生の講義風景

兪先生は茶樹栽培と品種改良のエキスパートだからでしょうか、講義中に参考資料として茶園や茶樹の写真を駆使していらっしゃいました。
「ここは寒くて風が強いから茶樹の高さが低いんだよ」「この地方は雨が少ないからスプリンクラーで水を撒くんだ」と写真を見せながら説明していただくことで、文字だけでは伝わらない具体的なイメージをつかむことができました。

講座の内容は、
午前中:茶葉の見分け方と科学的な鑑定方法、茶葉の生産区と銘茶について
午後:茶葉の包装と保存、水について
でした。


参加者達の聴講風景

葉脈の側脈がくっついているかなんて気にしたことがなかったな。
銘茶は産地、歴史や伝統の有無、形状など色々な分類の方法があるけれど、それをコンパクトにわかりやすく網羅したテキストが手に入って嬉しいな。
…などと思いつつ、
茶葉専用冷蔵庫を個人で購入するのはやり過ぎでしょうか。生石灰はもっとやり過ぎでしょうか。
龍井泉の水はどうすれば汲めますか。
…なんて質問をしたらおバカなのがばれるからやめとこーと決意し、茶葉20種類をメモしたら今日の講義は終わりです。

同学が皆、我より賢く見えたので、ぢっと手を見る代わりに茶葉をぢっと見て、名前を書くことにしました。
読めるけれど書けない漢字が結構あり、ノートに「餅餅餅餅餅」、「蒙蒙蒙蒙蒙」などと書いていたら兪先生が「おお、漢字が書けるなんてすごいねぇ」と褒めてくださいました。



あ、ありがとうございます、でもそれって本当にホメホメポイントなんでしょうか。
ちょっと悩みつつ、初日から先生に褒められるなんて実に幸先の良いスタートだと思うことにして、明日も頑張ります。

寄稿By東塚

心也清茶社第8回目中級評茶員の試験

6月14日(土)梅雨の最中、杭州浙江大学にて、心也清茶社第8回目中級評茶員の試験が行われた。

天気予報どおり朝から大降りの雨。集合場所に移動する時から憂うつ。それでも20人の受験生は遅刻もなく、ほぼ定刻どおりに出発。

バスの中はプリントやノート片手に最後の追い込み。

バスが浙江大学の敷地に入るとゴン老師がお出迎え、会場へと誘導された。各自の持ち物を控え室に置き、筆記試験をする教室へ移動。

試験開始時に配られた浙江大学の紙コップの緑茶が美味しかった。(杭州のお水のせい?)

2番目の試験は紅茶の審評(最難!)

引き続き、茶葉名当てテストが順次行われ、終了。

そのあとは、集合写真の撮影。それから、大学構内のホテル(その名も神農)のレストランで昼食を取りました。

雨はやんで、不安定ながらも晴れ、帰りのバスの中に陽も射し込み、気分も晴れやか。全員ぐったりして寝入ってしまうかと思ったら、意外に元気!

ともあれ、受験生の皆様お疲れ様でした。講師、心也清の先生、スタッフの皆様方、お世話になり、ありがとうございました。

寄稿byM.T       


心也清茶社にての講座受講風景(浙江大学の王先生が講義中)


試験当日午前の筆記試験風景


浙江大学賓館のレストランにてのお昼風景


お昼料理の一部


茶葉審評試験風景1


茶葉審評試験風景2


試験終了後の集合写真撮影地への移動


茶学学科が入っている浙江大学校舎

 


資格試験参加者と先生達の集合写真


晴れやかな気分で帰りのバスに乗車

  

六安瓜片産地見学(下)–六安瓜片の作り方②

昨日は六安瓜片作り方の前半工程を紹介しました。
今日は昨日に続いて、六安瓜片作り方の後半工程を紹介します。

③毛火
籠に載せられた茶葉を炭火で含水率20-10%まで乾燥します。


「毛火」工程に使われる籠(中に小さい炭火炉がある)。

④小火
毛火工程が終わってから、枯葉、茎などを取り除いて、「毛火」と同じ器具で弱い炭火で含水率約10-8%まで更に乾燥します。

⑤老火
この工程は、六安瓜片独特の焙煎方法です。目的は、炭の明火(温度約530℃)で茶葉をさらに乾燥し、香ばしさと六安瓜片特有の風味を出すためです。
「老火」工程は、よく動詞「拉」(中国語で引張るかpullという意味があります)を付けて、「拉老火」とも言います。「拉老火」というのは、茶葉が乗せられている大きな専用籠を、作業者が二人で籠を引張って、運んで炭火炉の上に一段置いてからまた持ち上げて炭火炉の反対方向に持っていく作業です。この作業の繰り返しは「拉老火」と言います。


火力の強い「拉老火」の炭火炉。


「毛火」の時より大きな「拉老火」の専用籠。


「拉老火」のやり方(動画)。

六安瓜片産地見学(中)–六安瓜片の作り方①

お待たせしました。
今年のゴールデンウィーク(5/1~5/3)に産地にて見学した、六安瓜片の伝統的な作り方を紹介します。
六安瓜片の作り方は、茶摘みをしてから、大きく分けますと、①炒生鍋②炒熟鍋③毛火④小火⑤拉老火と言った五つの工程からなります。以下に簡単な説明と写真を混ぜて六安瓜片の作り方を紹介します。
また、写真とサイズの大きい動画が入っていますので二回に分けて掲載させていただきます。

お断り:この文章で紹介された六安瓜片の作り方やデータは、現地見学・取材したものであり、教科書に書かれているデータと若干異なることもありますのでご了承ください。

#茶摘み
六安瓜片は独山中小葉種という品種の茶木の葉から作られます。生葉は、芽ではなく、茶葉のみを使います。


このような茶葉を原料として使います。


茶葉のみを使います。

①炒生鍋(殺青)
温度が約180℃の鍋に一回200gを入れて1-2分間炒めて、殺青します。
炒生鍋とその後の炒熟鍋は同じ鍋を使いますが、この鍋は斜めになっていて、作業者が作業しやすくなります。


炒生鍋の風景です。

②炒熟鍋(做型)
温度が約130~140℃の鍋で、茶作り専用の道具で茶葉を敲きながら形を作ります。その時の含水率は約30%になっています。


「做型に使われている専用道具(箒!買ってきました)。


「做型」後の茶葉。

「做型」のやり方(動画)(データアップ待ち)。

【お知らせ】 夜間クラス開講のお知らせ

お待たせしました。

以前よりご要望の高かった夜間クラスがついに開講することになりました。

夜間クラスは、主にお勤めの方かどうしても都合により昼間の時間が取れない方を対象にしています。

夜間クラスの開講予定は以下の通りです。

  講義曜日   毎週火曜日
  時間      7:30~9:30
  担任先生   大江

参加御希望の方は心也清茶社までご連絡ください。

心也清生徒の茶芸表演

今年で15回を迎える上海国際茶文化節茶業交易会に於いて、心也清の生徒が烏龍茶の茶芸を表演しました。

表演者8名全員が高級茶芸師か高級評茶師の資格を持っており、今回の表演は福建省の呉雅真老師という有名な茶芸表演家の方に習った閩北烏龍茶の淹れ方を、表演者達がアレンジをしたとのことです。
表演者がお茶を淹れ終わった瞬間に拍手が起こりました。
ここから私を含むお手伝い班(4名)が素早く壇上に上がり、お盆を持って表演者が淹れたお茶をお客様に配りました。
お茶を飲み、片付けをし、表演が終了した瞬間、更に大きな拍手が会場を包みました。

当日たった独りでほぼ全員のヘアスタ イルをエレガントに決めたNさん、本帰国したのに(ほぼ)強請参加・更には当日のフラワーアレンジメントまで行うという八面六臂の大活躍をしたHさん、表演のために日本への帰国を延ばしたHさん、選曲の際に午前2時までかけて曲を探したYさんをはじめとした皆さんがほぼ毎日、20時になっても21時になっても時間が許す限り練習をし、茶巾の上げ下ろしひとつだけでもああした方がいいのでは、こうした方が良いのではと創意工夫を凝らしていたのを、飛馬の姉よろしくコッソリ覗いていたので知っています。

だから当然、大成功すると思っていました。
でも晴れ舞台でこの日のために誂えた中国風の上着をビシッと着こなし、美しく表演する皆さんは想像したよりもずっとずっと素敵で、感動しました。
目の保養をありがとうございました。そして本当にお疲れ様でした。

寄稿by東塚


演出前のテーブルセッティング


演出前のヘアセット準備


登場前の出演者と大江先生


茶芸表演中のひとコマ


茶芸を鑑賞している観客席風景

六安瓜片産地見学(上)

今年のゴールデンウィーク(5/1~5/3)に例年のように銘茶産地めぐりをしてきました。
今回は、一昨年の「キーマン紅茶」(安徽祁門)、昨年の「太平猴魁」(安徽黄山市黄山区)に続き、中国十大銘茶の1つとしてあげられている「六安瓜片」の産地と製造を見学するため、同じく安徽の六安市金寨県を訪ねました。
例年と比べ、今回目的地の六安市が遠いため、上海からの出発を早朝の7時にしました。
約7時間のドライブ(走行距離600キロ近く)を経て、午後2時ころにまず六安市にある、今回訪問先の「安徽省六安瓜片茶业股份有限公司」に到着しました。
安徽省六安瓜片茶业股份有限公司は「徽六」という六安瓜片有名ブランドを持つ、六安市大手の茶葉製販民営企業です。事前にその会社の営業経理に訪問の段取りをしてもらいました。


六安瓜片茶业股份有限公司本社正面写真


六安瓜片茶业股份有限公司店内写真1


六安瓜片茶业股份有限公司店内写真2

上海からの日本人のお客さんということで、董事長の曾さんが自らある生産基地に案内すると会社で待ってくれていたスタッフが説明しました。大きな騒ぎを起こしてしまったと不安を抱えながら、出された自社生産の「六安瓜片」を飲んで、董事長を待ちました。
ここでハプニングが起きました。綺麗に内装されている店舗を写真で取ろうと思い、持ってきたデジカメを取り出し、いいと思う陣取りをして、いざデジカメの電源ボタンを押しますとなんとデジカメは動きませんでした。冷や汗をかきながら原因を調べ、家を出るときに充電中のバッテリーを持ち忘れたことが原因でした。しまった!デジカメが使えませんと、今回旅行の目的の大半はパーになる気がしてきました。
早速車を出して、六安市内を巡り、同じ機種のデジカメを売っているところを探してみました。だめでした。
仕方がなく、使い捨てのフィルムも探してみました。それもだめでした。あきらめずに代替策として、フィルムのバカチョンカメラを買いました。フィルム写真がブログに載せられなくてもないよりはマシと思いました。

訪問先の会社に戻ってきましたら、董事長の曾さんもうすでに待っていました。挨拶をして、すぐさま董事長が乗っている先頭案内車に尾行して、生産基地に向かいました。
走ること4、50分、現在生産中のある生産基地に到着しました。金寨県の響洪甸というところでした。時間は午後4時ころでした。


見学した六安瓜片生産基地の外見
    (複数箇所があるそうです)


ちなみに同社が建設中の生産基地写真(今回訪問の基地とは別基地)


生産基地が面している川の風景


生産基地の周りに栽培されている茶樹

この基地での「徽六」ブランドの六安瓜片の紹介や製造工程見学・体験を終えたのはもう6時過ぎたところでした。

董事長本人は私達の途中で別件で六安市に呼び戻されましたが、会社の他の2名のスタッフが終始アテンドしてくれて、車で1時間ほど離れた私達次の訪問地霍山県のホテルまでに案内してくれました。おかけ様で分かりにくい道で迷わず早く目的地に到着が出来ました。

ちなみに六安市霍山県には昔有名な「霍山黄芽」という黄茶がありました。いまでも「霍山黄芽」という品種名が使われていますが、もう「悶黄」という発酵工程のない緑茶の製法に切り替えました。今回の旅で「霍山黄芽」という緑茶も少し買ってきました。写真も取りましたが、フィルム写真ですのでご興味のある方は、店でご覧に来てくださいね。

次回は今回見学した六安瓜片の製法を披露します。(デジカメ写真付き!ご期待ください)

『亜洲茶人論壇』に参加してきました

4月14日から4月15日にかけて杭州で行われた『亜洲茶人論壇』に参加しました。この論壇は杭州市上城区の人民政府が主催し、中国・香港・韓国・日本・台湾の茶人がそれぞれの立場から茶葉経済、茶道、茶館の経営などを語り合い、また、お互いの茶道・茶芸を披露しあい、相互交流をすることを目的としたものだそうです。


4月14日(月)
17時過ぎに上海を出て、19時半頃に杭州につきました。
杭州の中心地にある、清河坊という宋代の歴史建築を模したストリートの一角にあるレストランでディナーをいただきました。
一緒に円卓を囲んだのは、中国茶芸の代表として参加されている太極茶道茶館の オーナーや韓国から来た韓瑞大学校の鄭仁悟(チョン・インオ)教授などです。
多分きっと偉い人達なのだろうなーと思いながらもぐもぐ。トンポーロー、美味しい。今日もご馳走で嬉しいなぁ、もぐもぐ。「明日の会場は鼓楼(南宋皇宮朝天門…昔は皇帝が宮殿に出入りする時、門のところで太鼓を鳴らして知らせていたので、鼓楼と言うらしいです)と言って普段は一般人が出入りできないところなんだよ、いやー、会場として使う許可を取るのが大変だったよー、でもすごいでしょ(意訳)」とか「太極茶道のお店には女人禁制部屋があるんだけど、んもぅ明日は特別に公開しちゃうっ(意訳)」と言われました。私は結構、特別とか限定って言葉に弱い人です。なので嬉しくなりました。えへへ。


食事後、会場の下見に行きました。会場への道すがら、清河坊の通りを散策したのですが、この街並みは歴史文化特色街区として国家4A級旅遊景区に認定されているそうで、世界で唯一の『歴史的建造物にあるマ○ドナルド』があるそうです。でも会場自体は、一夜間出入禁止らしく入場できず。結局、翌朝に下見をすることにしました。ホテルに着き、ちょっとお茶した後、大江先生は翌日着る着物の衿を付け、翌日の論壇のスピーチ内容を遅くまで書いてらっしゃいました。白鳥が優雅で美しいのは水面下で必死にもがいているからなんですね。

4月15日(火)
朝9時にホテルを出て鼓楼を下見。全体の流れを軽くリハーサルした後、太極茶道のお店に行きました。
大江先生、ちょっとそこの急須を持ってきて下さい。えぇ、それです。で、ちょっとそこのオジサンと同じポーズをしてみてください。はい、チーズ。大江先生の面白写真を撮った後、ウワサの女人禁制部屋(写真撮影厳禁) に潜入です。オーナーの父親の写真や、韓国茶道で使うお釜などが飾られている単なる普通の客間っぽい感じの部屋でした。ちょっとがっかり。もっとウサンクサ…じゃなくって特別な空間かと思っていました。

その後、大江先生と神成先生は太極茶道茶館のオーナーと共に打ち合わせに入り、私は太極茶道茶館の中にあるミュージアムを探索しました。世界一長い薬缶や民国時代のアンティークが飾ってあったり、室内なのに昔の商店街や厨房の様子を再現してあったりで、とても楽しかったです。

11時にホテルに戻り、他の国の方たちと打ち合わせをした後、ホテルのレストラン内で食事後、先生方は着物にお召し替えです。論壇は14時から始まりました。神成先生他、各国の精鋭5名が壇上にて討論です。神成先生は日本茶道の「和敬清寂(和=仲良くすること、敬=互いに尊敬しあうこと、清=穢れがなく清らかなこと、寂=何もないということ…寂という概念はとても難しくて神成先生ご自身もまだ理解しきれていないとのことでした)」という言葉や、先代の裏千家家元のお茶を通じての国際交流を紹介され、質疑応答では抹茶が無農薬で安全であることを説明なさいました。


その後、日本茶道の披露です。神成先生が亭主をつとめ、正客はFさん、次客に大江先生、中国語での解説は裏千家上海同好会専任教師胡先生が行いました。


その後、太極茶道が披露されました。唐の時代の茶道を再現したのでしょうか、お釜で茶を煮る方式の茶道でした。太極茶道と言えば長い薬缶を使うものだとばかり思っていましたが、そうでないものもあるんですね。


その後も白熱した討論が続き、討論会が終わったのは予定を大幅に延長した18時過ぎでした。


翌日は韓国や香港、台湾の茶芸や現地の大学生との交流などがあるとのことでしたが、参加した心也清メンバーは授業や用事があるため当日中に帰らねばなりません。夕食も大変なご馳走が出ましたが、途中で失礼してホテルに戻り、着替えを終えたらもう21時です。上海に戻ったのは結局0時を少し回った頃でした。「太極茶道の長い薬缶は各自の体格に合わせたオーダーメイドなんだって」とか「韓国の大学教授が『I love静岡』って言うからなんでだろうって思ったら去年静岡で行われた緑茶コンテストで審査員したんだって」という土産話をするには遅すぎる時間です。韓国や香港、台湾の茶芸も見たかったな、でもまた機会があるかな、あるといいなと思いつつ、大人しく眠りにつきました。

私は中国に来て中国茶の美味しさや奥深さを知りましたが、このような機会をいただいたことで、日本茶道の奥深さを垣間見ることが出来ました。海外の方に「一期一会」という言葉や「日本茶道の『拝見』やお道具の意味」に興味を持っていただいたことも、自分のことのように嬉しかったです。この度、心也清で「和のサロン」を開講すると伺い、早速申し込むことにいたしました。(追記:「和のサロン」当日は足が痺れるわ攣るわで大変見苦しい姿をさらしてしまいました。とほほ)。

寄稿by東塚